眠っていた動物達も目を覚ましだしました。
そんな春うららかな頃………オリーブ農園は最も過酷な時期を迎えていきます。
『地獄の草抜き』『悪魔のオリーブゾウムシ』との戦いです。
そんな中、この過酷さが一転するような栽培方法に挑む1つの農園があります。

「うちの農園、めっちゃ面白い農園になっていますよ」。
オリーブ栽培をしているヤマサン醤油の佐藤さんがニッと笑って話してくれました。
その言葉にそそられて農園を見学させてください!とお願いをしました。
行ってみると…草がたっぷりと生えています。
紫色のきれいなお花も沢山咲いています。
「…。」
この見たこともない状態をどう理解したらいいのか戸惑う私に
「すごいでしょ、もうね、草の上を野うさぎが駆け回って、草を食っているんだよ」。
と誇らしげに話します。
「…。」
この段階で珍しい点は以下の2点。
(1)草がたっぷりと生えている
(2)野うさぎが駆け回って、草を食っている

小豆島のオリーブ農園では草は御法度。
詳しい理由は後で捕捉するとして、最低でも幹の周りは徹底的に取り除きます。
できるのならば農園全体の草を徹底的に取り除きます。
さて、なんでこんな珍しい状態になっているのでしょうか。
三択。
(A)草抜きに手が回らなくて放置している
(B)動物が寄ってくる環境を作り、糞を肥料にしている
(C)草抜きをしなくていい環境を作っている
答えは(C)。
過酷の工程の1つ『草抜き』をしなくていい環境を作っているのです。
どうやってかというと『抜くべき雑草がそもそも生えないようにする』ことです。
私が「そんなこと、できるのか!」と驚いていると、佐藤さんが「実はこの草がすごいんですよ」と。

この草の名前は『マメ科ソラマメ属のVicia』。単なる雑草じゃありません。
Viciaの畑に与える特性は主に以下の3点。
(1)夏になればペタリと倒れ、地面を覆うようになる。
(2)Viciaに含まれている窒素分(植物を大きく生長させる成分)が土壌へと行き渡る。
(3)アレロパシーを有しているため、適切なViciaの繁殖環境をVicia自身が整えると共に、他の不適切な雑草が生えるのを防ぐことができる。
特に(1)に注目。『地面をペタリとはうようになる』とはどういうことか。
(1-1)土壌をViciaで覆って陰を作ってしまうので、日光を必要とする他の雑草が繁殖するのを防ぐことができる。
(1-2)ペタリとはうことによって、根本にやってくるオリーブゾウムシも発見しやすくなる。
そう『抜くべき雑草がそもそも生えないようにする』とは(1-1)(3)に書かれているように『不適切な雑草が生えるのを防ぐ』仕組みがViciaを植えることで生まれてくるのです。
…なるほど。
『地獄の草抜き』が解消することによって、地獄行きからまぬがれるだけではなく、草抜きに費やしてきた時間が空いてきます。
人件費が減る分、オリーブオイルもお手頃価格になるかも!?もしくは品質を上げる試みや投資ができる!?
なんて、まだ『試み』段階なのにいろいろ期待しちゃいます。
次回は『野うさぎが駆け回って、草を食っている』とは!?についてお話しします。
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《捕捉》
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草を取り除く理由
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草を取り除く理由は第一に『オリーブゾウムシ対策』です。
◆草があることでゾウムシを見つけにくくなる。
◆日陰を好むのでソウムシが生息しやすくなる
◆草が生えることで作業全てがしにくくなる。
◆草が生えることで土壌の栄養成分が草に取られてしまう。
以上の理由により、雑草の繁殖期に農業人の皆は真っ黒になりながら次々と生えてくる草と戦い続けています。
「上を向いて歩こう」ではなく「下を向いて抜こう(刈ろう)」です。
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アレロパシー
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参考1:植物情報物質研究センター『アレロパシーとは?』
http://www.phoenix-c.or.jp/~planteco/about_allelopathy.htm
参考2:アレロパシー - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AD%E3%83%91%E3%82%B7%E3%83%BC
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Vicia
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参考1:イー薬草・ドット・コム『クサフジ』
http://www.e-yakusou.com/sou02/soumm016.htm
参考2:三河の野草『ナヨクサフジ』
http://mikawanoyasou.org/data/nayokusahuji.htm
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紹介してくれた佐藤さん
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ヤマサン醤油『小豆島オリーブオイル』
http://yamasanshoyu.com/shop/oliveoil.html
kelly